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ブランドン・ウェブ、遂に連続イニング無失点を40の大台に乗せる。

  • 2007/08/19(日) 17:36:09

メジャーには、「もう破ることができない」という冠で語られる偉大な記録がある。例えば、その年の両リーグ投手MVPに送られるタイトルで名前を残しているサイ・ヤングの通算511勝、サイモン&ガーファンクルの歌にも登場するジョー・ディマジオの56試合連続安打がそれにあたる。だが、野球は常に変化し、進化を続けるスポーツでもある。ジョージ・シスラーが1920年に残したシーズン最多安打257本は、マリナーズのイチローによって書き換えられ、ハンク・アーロンの持つ通算755本塁打も、今季バリー・ボンズが更新している。そして今、19年前に達成された時でさえ「世紀の大記録」と言われた連続イニング無失点記録を塗り替えようとしている投手が出現している。彼の名はブランドン・ウェブ、現在ナ・リーグ西地区首位を走るダイヤモンドバックスのエースである。
webb.jpg

ウェブは、1979年5月9日生まれの28歳で、ケンタッキー大学の出身である。2000年のドラフトでダイヤモンドバックスから8巡目に指名を受けてプロ入りを果たし、2003年4月22日にメジャーデビューを飾っている。この年ローテを勝ち取るといきなり10勝9敗をマークしてアリゾナのファンにその名を売ったウェブは、2004年こそ7勝16敗と成績を落としたが、これは弱体化の進んだチーム事情がウェブの投球に応えられなかったという側面もあった(何せ、このシーズンのダイヤモンドバックスは54勝108敗という目も当てられない成績だったのだ)。しかしウェブは、2005年に14勝12敗と自己ベストの勝ち星を残して失地回復に成功し、更に昨年は16勝をマークしてブレーブスのジョン・スモルツらと共に6人でナ・リーグ最多勝を分け合い、更にはサイ・ヤング賞を受賞する充実したシーズンを送っている。その勢いを今季も失うことなく、ウェブはポストシーズン行きに意気上がるチームの象徴的存在として、ここまで13勝8敗、防御率2.63、161奪三振という素晴らしい数字を残しているのである。そしてその活躍の中で、なんと42イニング連続無失点を継続しているのだ。

ウェブは、打者が手も出ないような剛速球をビシビシ投げ込むタイプではない。キメ球であるツーシーマーの球速は90マイルを越えるかどうかというレベルなのだ。しかしウェブは、この球をコントロールよく低めに集めながら、落差のあるスライダーとチェンジアップで打者を翻弄している。そして、このコンビネーションが安定している今、ナリーグの各チームはウェブをどう打ち崩すかで頭を悩ませている、というわけなのだ。

ウェブが最後に失点を喫したのは7月20日の対カブス戦だった。この試合の6回に2点を奪われた上、試合そのものも3-6で落としてウェブは今季8個目の黒星をつけられたのだが、降板する直前の7回裏を0点で抑えたところから大記録への挑戦が始まっていたのだ。
ウェブは7月25日の対マーリンズ戦と7月31日の対パドレス戦をそれぞれ7回まで投げて無失点に抑え、ここで勝ち星を二桁に乗せたこともよかったのか、カレンダーがめくられた8月になると更にその投球内容はすさまじいものになっていく。8月5日の対ドジャース戦、8月11日の対ナショナルズ戦、そして8月17日の対ブレーブス戦で3試合連続完封勝利の離れ業を演じたのである。この快投によって、ウェブにはアメリカ中の野球ファンが視線を向けるようになったのだ。もしかしたら、あの大記録を破る男になるのでは?と。

ご存知の方も多いと思われるが、1988年に59イニング連続無失点の大記録を達成したのは、当時ドジャースに在籍していたオレル・ハーシュハイザーだった。彼はこの偉業から後々”ミスター・ゼロ”と呼ばれることになるのだが、当時流行していたSFFとスライダーを相手打者の外角低目へ丁寧にコントロールしながら投げるその姿は機械にも例えられるほど、正確無比なものだった。それ以前の記録保持者は1968年に58イニング連続無失点をマークした元ドジャースのドン・ドライスデ-ルだったのだが、ハーシュハイザーはそのちょうど20年後に偉大なる先輩を乗り越えている。そして今、つまりハーシュハイザーの手によって不滅の上に不滅となったこの記録に、19年経ってウェブが挑むという図式になっているのだ。
何と無く似たようなスパンで記録更新の可能性が巡ってくるあたりに因縁めいたものを感じさせられるのだが、ウェブがすごいのはハーシュハイザー以降、メジャーでは40イニング連続無失点のハードルを越えた投手が誰もいない中で、その数を42にしているという点である。これだけでも既に21世紀最初の投手と呼べるのだ。

ウェブはハーシュハイザーの記録について「あと2試合完封すれば新記録なの?問題なくできるんじゃない?楽しみにしておくよ」と目をくりくりさせながら茶目っ気たっぷりの表情でコメントしているが、軽いノリの本人に比較して、周囲の表情は「マジでやっちゃうんじゃないの・・・?」というものになっている。地区首位のメッツを追う中で、2安打に抑え込まれて痛い黒星を喫したブレーブスのボビー・コックス監督は「今のウェブは誰にも打てない。それほどすごい投球をしてるんだよ」と真剣な声で語っている。しかし、ブレーブスは現在チーム打率.278でナ・リーグトップを維持していることを思うと、それよりも打率が劣る他のチームが果たしてウェブから得点を挙げられるのか?という心境にもなってくる。難攻不落状態のウェブから貴重なヒットを放ったジェフ・フランコールでさえ「ウェブは、投げたい球を投げたい時に投げたいように投げてたよ。そして試合の最中、ずっと彼はオレ達よりも先を行ってた」とお手上げだったことを口にしているのである。
一方、この試合で2本のソロ本塁打をスタンドに打ち込んでウェブの勝利を後押したクリス・ヤングは「ウェブと対戦するより、遥かに同じチームの一員でいる方がいいよ。ヤツの球が変化している様を見たろ?今はさ、スピードを抑えて投げてるけど、それが以前よりも全然いいんだよね。だからさぁ、打者にとっては、どう打てばいいのか思いつかない投手って言えるんだよね」とウェブの好調ぶりを「解説」している。

ウェブは、ハーシュハイザーの記録が生まれた頃のことを「オレまだ9歳だったな。リトルリーガーになった最初の年。で、オレはライトのグラウンドの外れで座ってたよ。だって、オレってひどいプレイしかできなかったから」と振り返っている。今の投球を知っている者には俄かに信じられない話だが、ウェブは「マジでひどかったんだ。試合には”最低限”のレベルにしか出なかったよ。1、2イニングかもう少し、って感じで。で、取りあえず試合には”最低限”、・・・要するに1回だけ打席に入った。それで交代になって、後は試合終了までベンチにいたのさ」と続けている。19年という時間とは、そんな野球少年をここまで大きく成長させるパワーを持つものなのだ、と思うとのんべんだらりと生活をしてきた自分を反省したくなってしまうところである。

ウェブは、次回の登板について「得点状況がオレに影響を与えることはないな。1-0だとしても、がんばるだけだよ。そして間違いを数多く犯さない、ってことだね。そしてそれが2点になり、3点になり、4点になっていけば、・・・今日の試合のようにね、まぁ一息はつけるよね。それがまた、オレを打者に向かわせよう、やっつけてやるぜ!って気持ちにさせるのさ」と話している。次の試合で記録に届くわけではない為か、いささか緊張感のない言葉になってはいるものの、逆に周囲から記録を意識させられても平然と自然体で受け流している姿からは、ウェブが自分の好調さを実感できていることが窺える。何にしても、ウェブには期待に応えてくれる雰囲気が確実に漂っている。

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