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タイガースのジャスティン・バーランダーが、ノーヒッターを達成する。

  • 2007/06/13(水) 14:55:31

DETROIT PITCHER JUSTIN VERLANDER HAS A NO-HITTER THROUGH SIX INNINGS.

DETROIT CENTER FIELDER CURTIS GRANDERSON EXTENDED HIS HITTING TO 12 GAMES WITH A TRIPLE IN THE SIXTH INNING.

DETROIT PITCHER JUSTIN VERLANDER HAS A NO-HITTER THROUGH SEVEN INNINGS.

DETROIT PITCHER JUSTIN VERLANDER HAS A NO-HITTER THROUGH EIGHT INNINGS.

DETROIT PITCHER JUSTIN VERLANDER HAS A NO-HITTER THROUGH 8 1/3 INNINGS.

DETROIT PITCHER JUSTIN VERLANDER HAS A NO-HITTER THROUGH 8 2/3 INNINGS.

DETROIT PITCHER JUSTIN VERLANDER HAS THROWN A NO-HITTER.

・・・この試合のGame Notesは、ただ淡々と試合の経過を伝えただけだが、その間マウンドで一人戦っていた男の心情は、いかばかりだったのだろうか。

デトロイト・タイガースのジャスティン・バーランダー投手が、6月12日の対ブリュワーズ戦で自身初のノーヒッターを達成している。与えた四球は4だった為、引用したNotes同様、試合中盤までは誰も気がつかない状況のようだったが、静かに深く潜行していた分、終盤のマウンドに立つバーランダーへの圧し掛かったプレッシャーもかなりのものがあったようである。

この日のバーランダーは、2回までブリュワーズ打線を三者凡退に抑える上々の滑り出しを見せている。3回表にはビル・ホールに四球を与えたが後続を三振とファーストゴロに抑えて無失点で切り抜けると、その裏タイガースはインゲがブリュワーズ先発のジェフ・スーパンからレフトへソロ本塁打を放ち、先制点を挙げる。だが、取りあえずこの段階でバーランダーに見えていたのは、白星の片鱗くらいだったかもしれない。
バーランダーは4回表と5回表にもJ・J・ハードリーとホールに四球を与え、これで何となく「もう誰かがヒットを打ったよね?」という空気も試合に漂うような感じになったのだが・・・。
6回表、タイガースは1死2塁のチャンスにグランダーソンがライトへ三塁打を放ってまず1点を追加、更にポランコがライトへ犠牲フライを打ち上げてもう1点をバーランダーにプレゼントする。更に7回には1死2塁の場面でインゲがセンター前へタイムリーを放って4点目をゲット、これで残る注目はタイガースがこのまま勝利できるのかどうか・・・、だったはずなのだが、スコアボードを見ればブリュワーズのHは0のまま。そう、バーランダーがノーヒッターを継続中だったのだ。
8回表、先頭のエストラーダをファーストゴロに打ち取って残りのアウトは5、しかしここで打席に入ったホールにこの試合3つめの四球を与えてしまう。嫌な雰囲気が漂う中、左打席にゲイブ・グロスが入る。しかし打球は、ショートのネイフィ・ペレスへ。これを掬い上げたペレスは二塁のカバーに入ったセカンドのポランコへ、そしてポランコは一塁のショー・ケーシーへと球を送り、ダブルプレイを完成させ、バーランダーを救っている。

9回表、バーランダーは先頭のクレイグ・カウンセル、続くトニー・グラッファニーノを共に空振り三振に切り捨てる。力強い投球で後1人まで漕ぎ着けたバーランダーに、3万3555人のデトロイトのファンが歓声を降り注ぐ。打席には、この日与えた4つの四球のうちの1つで出塁させているJ・J・ハードリーが入る。バーランダーは高めのカーブを投げ、これを振ったハードリーの打球はライトのマグリオ・オルドネスの守備範囲へ。これをオルドネスが難なく捕球して、タイガースにとっては1984年にジャック・モリスが達成して以来のノーヒッター達成の瞬間が訪れている。
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「5回か6回あたりから、気がついたかな。まぁ、気にするなってのも無理な話だけど」と試合後バーランダーは語っている。また「チームの皆は、(点が入ったりすると)ハイファイブはしてくれたけど、誰もオレに近づかず、隣に座るなんてことをするヤツもいなかったよ」と試合中の様子を振り返っているが、ブリュワーズにしてみれば、この日のバーランダーは全く隙がないと映っていたようで、2つの三振を奪われたカウンセルは「オレ達束になってかかって、やっと4、5球強く打てただけだったよ。それだけバーランダーが試合を支配していた、ってことさ」とコメントしている。しかし、バーランダー本人にとっては、とにかくヒットを許さないことだけが問題だったわけで「正直言うとさ、アドレナリンが噴出しまくりだったよ」と必死にアウトをとりにいっていたことを打ち明けている。
それだけに、最後の打者となったハードリーの打球を見上げた時は感無量だった模様。なのに、それを邪魔したのがバッテリーを組んでいたパッチことイヴァン・ロドリゲスだった。ノーヒッターを確信したバーランダーは、マウンドを降りながら「やってやったぜ!」と叫び、待ちわびた27個目のアウトが成立する瞬間をその目にしようとしたのだが、それは叶わなかった。キャッチャーズ・ボックスから駆け寄ったロドリゲスが、その前にバーランダーを抱きしめていたのだ。「捕球するシーンが見たかったんだ。でもロドリゲスがもう、耳元で叫び声を挙げてたよ!」とバーランダーが話すと、ロドリゲスは「オレ、バーランダーよりも興奮してたと思う、うん」と”妨害”の場面を振り返っている。
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歓喜に沸くチームの中で、人情家として知られるタイガースのリーランド監督は一人流れ出そうになる涙と格闘していたようである。リーランド監督は「人は誰でも、こういう場面を迎えると、心にいくつもの葛藤を生むものだ」と話し、「私は、彼と同じチームで幸せだと思う。このチームにいられることも幸せだと思う。そして、こんな特別な夜をその目にできた多くのファンのことも幸せだと思う」と結んでいる。

バーランダーのノーヒッターは、ホワイトソックスのマーク・バーリーが4月18日の対レッドソックス戦で達成して以来で、今季のメジャーでは2回目。デトロイトでのノーヒッターはエンジェルスのノーラン・ライアンが1973年にタイガースタジアムで達成して以来34年ぶり、ブリュワーズがノーヒッターに沈んだのは1994年4月27日にツインズのスコット・エリクソンに達成されて以来13年ぶりのことになっている。

バーランダーは1983年2月20日にバージニア州のマナキン・サボットという街で生まれている。グーチランド高校、オールド・ドミニオン大学を経て2004年のドラフトで1巡目(全体で2番目)にタイガースから指名を受けてプロ生活をスタートしている。メジャーデビューは2005年6月4日で、この年は2試合に登板、そして昨年は150キロ後半のストレートと145キロ前後のカーブを武器にローテーションの一角を占め、17勝9敗、防御率3.63という素晴らしい成績を残して、タイガースのワールドシリーズ進出を演出した上、ア・リーグの新人王を受賞するに至っている。
バーランダーは今季もこれで星を7勝2敗としたが、タイガースにとって楽しみなのは、前回ジャック・モリスがノーヒッターを達成した1984年は、パドレスを破って1968年以来のワールドチャンピオンに輝いていることである。今日の記録が、あの年の再現への布石となるのかはわからないが、37勝26敗で貯金11としたタイガースは、現在ア・リーグ中地区でインディアンスと同率首位である。

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